「鍼灸治療を受けたよ!」と聞いたら、皆さんの反応はどうでしょうか?一度でも経験のある方なら驚いたりする事はないと思いますが、まだ未経験の方なら・・・
Q1: 鍼は痛いのでしょうか?

 「全く痛くありません!」と言いたいところなんですが…、そう言えないのが正直なところです。何故かと言いますと、やはり感覚には個人差があるために感じ方にかなりの差が出てしまうからです。では、実際のところどんな刺激を感じるのか説明していきたいと思います。主に、私が『脈診治療』で用いるのが、太さ「0.12㎜」の鍼で刺す深さは数ミリです。分かり易く体の中で置き換えてみると、だいたい髪の毛の太さと考えていただければ良いと思います。ですから、だいたいの方が感じる刺激としては「チクッ」とアリに噛まれた感じに近いと思います。一方で、西洋学的考えで使う鍼は、硬くなった筋肉や筋膜を直接狙っていきますので太さと刺す深さが増え「ズーン」とした刺激に変わります。この現象を『鍼のひびき(響き)』と言い、鍼灸特有の現象です。この刺激を出す方法は特別な技術ではなく、鍼灸学校で響かせる仕方を学生同士で確認しあいながら授業で習得していく『基本技術の一つ』です。ただし、この刺激が万人に良いわけではなく患者さん自身の体調が悪い時や虚弱体質が見られる方には刺激が強すぎて合わない(強い倦怠感・脳貧血など)を起こしてしまう事があります。刺激療法ですから、いくら良い物でも人によっては不快な感じであったり最初は良く感じないかもしれません。比較的、男性のほうが生理的に痛みに弱い傾向にあると思います。そんな方には、全く鍼を刺さないで皮膚を「擦ったり・押したり」といった種類の鍼もありますので、無理せず自分に合った治療方法を一緒に見つけて行きましょう!

 
 
 
 

Q2: お灸は熱いのでしょうか?

 こちらは自信を持って「熱くないです!」と言えると思います。良くご年配でお灸を経験された方のの話を聞くと「悪いことをしてすえられた」とか「柱につかまって耐えた」と恐ろしい事をするイメージではないでしょうか?確かに、現在でもそのようなお灸をしている所もありますが、当院では同じ治療効果を出すのであれば「火傷などおこさずに」するべきだと考えています。特に、女性にとって大事な皮膚に火傷痕などを絶対に作らないために、皮膚とモグサの間に「熱緩和シール」を使います。これにより、安心してお灸を受けていただけると思います。また、室内で煙を出されると困る方や、喘息や呼吸器が弱いので煙は苦手と言う方には、煙がほとんどでない無煙のお灸もありますのでお気軽にご相談ください。

 

 
 
 
Q3: 鍼は安全なのでしょうか?

 もちろん当院においては「100%、いえ120%安全」だと言えます。今から、30~40年ぐらい前までは病院などの医療機関では注射針が使い捨てではなく、高圧滅菌消毒で不特定多数に使い回しをしていた時代がありました。それと同様に、鍼灸の世界でも同じでした。しかし、昨今の医療を取り巻く状況は一変し100%の安全の保障が保たれなければ、患者さんに使うべきではないと考えられてきています。当院でも、「一度使用した鍼は、他の患者さんには絶対に使用しない」との理念の下にディスポーザブル鍼(使い捨て)を使用しております。また、使用する鍼にも安心安全な日本製にこだわり、静岡県清水にあります「セイリン」社製の鍼を使用しています。


セイリン株式会社

Q4: 鍼は何に良いの?

 NIH(米国国立衛生研究所))の発表では、『成人の術後および化学療法による吐き気・歯科手術後の痛みの軽減には有効。また、薬物中毒・脳卒中後のリハビリテーション・頭痛・月経痛・テニス肘・線維筋痛症・筋筋膜痛・変形性関節症・腰痛・手根管症候群・喘息、等に関しては補助療法として有用か包括的患者管理計画に含めることが出来る可能性がある』(1997年)との声明が出されています。

 日本では6疾患(1、神経痛 2、リウマチ 3、腰痛症 4、肩関節周囲炎(いわゆる四十肩)5、頚腕症候群 6、頸椎捻挫症候群)について効果が認められて保険適応(医師の同意書が必要)とされています。

最近の医療の現場では、エビデンス(臨床結果における科学的根拠)が重要視されてきていますが鍼灸においても例外ではありません。しかし、東洋医学を西洋医学的方法で調べるために、研究・文献の数が西洋医学に比べて圧倒的に少ない為にエビデンスが得られにくく、医師からの信頼度が低いという点が、昔から変わらない問題点です。これからの鍼灸の普及の為にも、一日でも早い作用機序の解明・再現性の証明・臨床研究報告の更なる増加を願っています。

 
 

Q5: あん摩・マッサージ・指圧の違いは?

 『あん摩』は、古くは中国で生まれ『あん(按)』は押さえる、『ま(摩)』は撫でるを意味しています。主に、衣服の上もしくは手拭いのような物を用いて遠心性(体の中心から手足に向かって)に東洋医学の考え方の経絡に沿って施術していきます。

 『マッサージ』は、ヨーロッパが発祥で明治時代に日本へ輸入されました。オイルやパウダーと呼ばれる副材を用いて求心性(手足から体の中心に向かって)に皮膚を直接刺激していきます。主に血液やリンパの流れを良くしていきます。

 『指圧』は、日本古来からの手技で明治時代末期から大正時代にかけて確立されました。衣服の上から指や手のひらを使い、体に対して垂直圧で刺激し体の矯正やツボを意識した刺激で、特定の疾病に対しての治療効果を目的としています。

 全ての手技が行える『あん摩マッサージ指圧師』になるためには各種学校で、3年以上の就学(基礎分野120時間以上・専門基礎分野1260時間以上・専門分野1800時間以上)と厳しく規定されており、また最終的には国家試験での合格も義務付けられています。最近、街中で見かける『揉みほぐし』『ボディケア』などの看板店舗では、国家資格者とは違い数週間で認めているような、いわゆる無資格にあたりますのでご注意ください。また残念なことに、富士市内で『指圧師』資格が無いにもかかわらず、指圧の看板を掲げてあたかも『あん摩マッサージ指圧師』でもあるかのような事をしているとの報告がありました。知識・経験において未熟なために重篤なケガ(骨折・内臓損傷)の恐れがありますので、間違えてもご利用にならないよう注意してください!

 

 
Q6: はり?きゅう?指圧?マッサージ?何をどう選べば良いの…

 これが一番難しい事かもしれません。どれが一番とか絶対とかはありませんので、体調・症状・年齢…当院では様々な状況を踏まえ、相談しながら患者さんと最適な施術メニューを作りたいと思っています。当院の特徴は、東洋医学と西洋医学を融合させた『ハイブリッド鍼灸』ですから、東洋医学の基本手法『脈診』を用いた鍼灸施術は自律神経系の症状全般に向いていますし、解剖医学から原因を探って行った時に、傷んでいるFascia(ファシア/筋繊維・筋膜)が原因と思われる時には患部に直接アプローチやパルス鍼が向いていますし、指圧・マッサージ(オイルマッサージ)・顔鍼まで様々な施術がありますので、全身に見られる多くの症状に対応できると思います。また、新たに理学療法士・管理栄養士さんとの連携が始まりましたので、リハビリに関する事から食事相談まで幅広く対応できるようになりました。お困りでしたら、いつでもお気軽にご相談ください!

 
 
 

鍼が効かなかった?

 他院から来られた初めての患者さんから良く聞く事があります。『チョコチョコっと刺して、軽く擦られて。はい終わりです。やはり患者さん自身の努力も必要ですよ…』と言われました。この事を聞くたびに「だから、鍼灸は世間から特に医師からも認められないし伸びないんだ」と、同じ鍼を扱う人間からしたら申し訳ない気持ちになります。病気には、同じ症状でもその方の生活環境・手術歴など違いますので全てを聞き出しそれを踏まえた上で、『このような症状で原因は○○と考えられます。また、私の鍼灸ではここまで改善出来ると思いますが、この点は改善出来ないので病院での診察を一度受けて下さい』などと患者さんに対して図を交えて説明をします。また状況によっては「この部分が固くなりやすいのでこの姿勢は避けてくださいとか、この簡単なトレーニング動作を続けてみて下さい』などと具体的なアドバイスもして行きます。いくら良いものでも『今している事が何なのか、どんな意味があるのか』が患者さんに伝わっていなければ不安でしかないと思います。私がいつも思い出す新米の時の出来事があります。高齢の患者さんで症状から『重度の脊椎管狭窄症』だと思われたので『私の鍼では○○さんの症状は改善出来ません。病院での詳しい検査を一度受けて下さい』と2度ほどの鍼灸施術後にお伝えして次回の予約は受けなかったのですが、帰り際に『先生、私は昼間1人で病院にも気軽に行けません。手術は嫌ですし子供にも迷惑かけたくないので何とか少しでも軽くしてくれれば良いんです…。もう診てくれないんですか?」と寂しそうな顔で言われたことが忘れられません。この事を踏まえて、当院は初診時に『西洋医学観点からの病状説明・鍼灸の出来る事と出来ない事の説明・予後予測』を十二分に行い納得していただいてから施術して行く事を心がけています。また私自身、腰椎ヘルニアを患った経験から辛い症状に必死に耐えてきたような患者さんに『治るためには患者さんの努力も必要です』などと言うのは本末転倒で、施術者自身が全てにおいて一層の努力と研鑽をするべきだと考えております。

頑固なコリの原因

 最近の研究で、『Fascia(ファシア)と呼ばれる繊維性の結合組織が原因』だと分かり始めました。この組織は、普段は数個の筋肉を一つにまとめ上げスムーズな動きをしてくれますが、一度絡んだような状態であったり、厚ぼったい感じになってしまうと揉んだり押したりでは太刀打ち出来ない状況になってしまいます。良く『マッサージした時は良いんだけどスグに…』と言う原因がココにあります。ですから、まず鍼で細かく『Fascia』を探し当て、ピンポイントで刺す技術が必要になります。鍼灸師は、最低でも十年は経験が必要などとも言われますが、探り当てるには筋肉のプロである、あん摩マッサージ指圧師の資格も必要だとも言えます。当院は、はり師ときゅう師とあん摩マッサージ指圧師の3つの国家資格を取得していますのでお任せください。

『治療』と『施術』の違い
 正確には『治療』は医師がする行為を意味していて、医師だけが使える言葉になります。ですから『医師以外が行う行為は全て施術』と呼ばれる事になります。良く、確定申告の医療費控除の項目で『治療で使われた鍼灸マッサージ』は領収書で認められます…と言う項目がありますよね?あの場合は、医師の同意書がある鍼灸マッサージ治療ということになります。それ以外の鍼灸マッサージは、『施術』と呼ばれ『自由診療』との扱いになります。