東洋医学と西洋医学の大きな違い

  東洋医学と聞くと、皆さんのイメージでは何が思い浮かばれるでしょうか?自然・副作用がない・漢方薬…、それに対して西洋医学と聞くとどうでしょうか?手術・検査…、様々な意見が出て来ると思います。根本的な違いを一言で言うとしたら、西洋医学は『身体に起きた病をさらに詳しく診て行き』、東洋医学では『病が起きた身体全体を診て行く』事ではないでしょうか。分かり易く例を挙げるとしたら、風邪の様な症状が出た場合に病院へ行くと大体は「呼吸音、ノド、血液検査、体温…」そして「検査の結果はインフルエンザです。」とか、「いわゆる感冒(カゼ)ですね。薬を出しますので安静に」だと思います。
 一方の東洋医学では『高熱やインフルエンザの症状では、すぐに病院での診察を受けてください!』となりますが、それ以外の「なかなか風邪の症状が引かなくて…」といった場合、東洋医学の基本になる『脈診』と言う検査方法で身体の状態を判断し、風邪の症状が長引かせている原因を探ります。そして「元々、胃腸が弱かった所に身体を温める機能が弱ってしまった…」との脈診での判断が出たら「まずは、胃腸の力を上げて行くツボに鍼をして 行きます」との流れになります。ですから、同じ症状でも、個人の体質や男女による違いなどで対応の仕方が変わって行く事になります。最近、医院で漢方薬が処方され身近な薬になりつつありますが、その時でも漢方薬も東洋医学の一つですから本来は脈診をしなければならないのに『ツムラの○○番…』と脈診をせずに症状だけで安易に処方されてしまい、漢方薬の効果は半減してしまうか、全く意味がなく反対に害になる事も起きています。 


東洋医学の基本手法『脈診』

  では、脈診とは何でしょうか?皆さんの手首にある左右の橈骨動脈に鍼灸師の人差し指・中指・薬指の三本指で触れて身体の状況を判断する『東洋医学の基本』となるものです。西洋医学でこの脈を診る時の目的は、脈拍数や脈の打ち方のリズムを確認する為なのですが、東洋医学では脈を診る事は西洋医学の目的にプラスして、お腹(いわゆる五臓六腑)の具合から睡眠状況・ストレスの具合など、全身に張り巡らされている血管を通じて様々な情報を取り出すといった具合です。
 
 私は恥ずかしながら学生時代、この方法を嘘くさいおまじないのような目で見ておりました。恐らく鍼灸を体験した事がない方や知らない方にとっても同様なのではないでしょうか?生まれてから西洋文化、西洋医学で育ってきたのですから当然だと思います。しかし、多くの患者さんに接し『痛い所だけに鍼を刺す方法では限界がある』と痛感し再度、鍼灸の原点である『脈診』を勉強し患者さんに提案してきた経緯があります。恐らく皆さんも、鍼灸は『腰痛・肩こり・ひざ痛など痛い箇所だけにするイメージ』になっていると思いますが、本来の鍼灸治療の得意分野は『五臓六腑』すなわち『お腹の治療が得意分野』なんです。性格が色々あるように、お腹にも個性があって『風邪を引きやすかったり』『お腹を壊しやすかったり』、または『食欲旺盛で食べ過ぎてしまう』など個人個人で違いがあると思います。強すぎる内臓を抑えて弱っている内臓を元気にしてあげ、『内臓同士がケンカしないように調整していく事』が脈診の目的です。お腹を家族と例えると分かり易いかも知れませんね。お父さんが強すぎても、お母さんが弱すぎても家庭はうまくいきませんよね。それぞれが力を出し合い協力しバランスを取り合ってそれぞれの『理想の家庭』が出来上がっていると思います。私個人の考えではありますが、東洋医学という西洋医学とは全く違う考えでなりたっている鍼灸をするにあたり『鍼灸師が脈診をしない』と言う事は、厳しい言い方に聞こえてしまうかも知れませんが、十分に鍼の力を引き出せず『単なる、針刺し人』となってしまう気がします。
  最近、『内臓同士が連絡を取り合っている』など、新しいが発見があったり、昔から東洋医学で言われていた事が分かり始めていますが、やはり東洋医学を西洋的な科学の力で解明して行く事の難しさがあります。以前から解剖生理学では、手足の刺激は主に副交感神経を高めて行き、体幹部の刺激は交感神経を高めていくと言う事が言われています。恐らく脈診を受けられて、手足に鍼をし始めた時に多くの方に出る共通の反応で『お腹がグルグル鳴り始めたり』『お腹が空いたような、軽くなったような感じ』または『急な眠気』が出て来ると思います。ちょうど、交感神経から副交感神経に切り替わった反応です。日常的に緊張が強い方ほど反応が強いかと思います。この状態を確認してから、その患者さんが訴えられている症状へアプローチをして行きます。ですから、患者さんが来られて「腰が痛いです。」と来られて「はい、腰に鍼を刺しますからベッドに下向きで寝てください。腰に鍼をします…」ではダメなんですね。多少は良くなっても、慢性的に辛い腰痛で長年悩まされて来たような方には痛みから自然と交感神経が強く働いている状況で完治しずらい状況です。もちろん、色々な考えがあり方法があるので間違いではありませんが、多くの治療院さんは、この流れではないでしょうか。
 
『あなたの鍼灸の先生は脈を診てくれますか?』


当院の特徴『ハイブリッド鍼灸』とは?

 まず、『身体を大地から生えている一本の木』だと考えてください。この頃、少し葉の勢いが落ちているな…とか、害虫にやられる事が増えたな…となってきたら肥料を与えたり殺虫剤をまいたり様々な対応をしていくと思います。この様に、伸びすぎた枝葉を剪定して日当たりを良くしたり害虫に侵されている箇所を改善していく事、これを『標治法(ひょうちほう)』と言います。膝が痛かったり・肩こりで辛い時に直接その箇所を治療して行く事がこれにあたります。しかし、これだけでは不十分で、何十年にわたって元気に木を成長させていく為には”根っこ”が大事になってくると思います。どんなに良い肥料や十分に水分を与えていても、それをグングン吸い上げる丈夫で元気な根っこでなければ、いずれは弱ってしまいますよね?そこで、その根っこが丈夫でいられる様に土の土壌改良や根回しをして行く事、これを「本治法(ほんちほう)」といいます。

  当院では、多くの患者さんに対して最初に東洋医学的観点でアプローチしていきます。患者さんの手首の脈からの情報を元に、経穴(ツボ)を選択して鍼・灸をする『脈診』をします。この最初の治療法を『脈診や本治法(ほんちほう)』と言います。これにより、体をより治りやすい状況にしてから、今度は西洋医学的観点で患者さんが訴えられている首・腰・膝などの痛みや硬くなっている箇所の『Fascia(ファシア)』(繊維性結合組織・筋膜や筋繊維)を直接狙って、鍼・灸・マッサージする標治法(ひょうちほう)をしていきます。
 
  東洋医学的な考え方による手法(脈診)と西洋医学的な手法(Fascia/筋繊維・筋膜にアプローチする鍼)を融合した『標治法と本治法を合わせた施術』を当院では『ハイブリッド鍼灸』と命名しています。


自然治癒力・自己免疫力
が鍼灸で上がる??

 良く東洋医学の特徴として上げられる事なのですが、残念ながら効果・効能として鍼灸が自然治癒力や自己免疫力の改善する力があるとのエビデンス(医学的根拠)が得られていません。だからと言って、それを謳っている治療院さんなどが嘘をついている分けではありませんが、現時点では当院として不確かな状況である以上は自然治癒力や免疫力が上がるとは言えないと考えています。唯一、確かなことは『鍼灸は『自律神経(交感神経系・副交感神経系)の調節作用がある』と言う事は確認されています。

鍼はクセになる?

 皆さんは、どこかで1度は聞いた事がある言葉かもしれません。やはり『鍼はクセになる…』は良いイメージではないですよね。逆に「温泉はクセになるよね!」と聞いたらどう思いますか?体に良いイメージですよね。恐らくは、一度も受けた事がない方がどこで聞いたのか『怖い・痛い・良く分からない』イメージで感想を話した程度の事なんだと思います。 最近では、一流アスリートが治療やメンテナンスで積極的に鍼灸を取り入れています。どうしてなのか分かりますか?効果が認められ、結果に繋がるからなんです。でも、受けた事のない方には、まだまだ未知な部分が多いですよね。いつでもご相談ください。お持ちしています